10月:わたしたちの本国は天にあります。(フィリピの信徒への手紙3:20)

 キリスト教の「天国」・・・「神の国」とも表現されますが・・・は、死後の世界の事だけを指しているのではありません。神の国とは、字の通り、神様が直接治めておられる状態のことであり、神様の愛や正義が貫徹され、誰一人悲しむ者が無く、全ての人が幸せである世界です。ですからこれは、単なる理想や彼岸の世界のことではなく、今生きている私たちの目標であり、使命であり、そして同時に希望でもあります。神様は一貫して「神の国」の実現を約束してくださっています。この約束を信じて歩むところに、大きく深い希望が生まれます。

 聖書の登場人物達は、神様の約束を信じ、希望をもって、人生という大きな旅を歩んでいました。そして多くの人々が、本当に旅に出ました。ユダヤ民族の祖、アブラハムは、「あなたから一つの国民が生まれる」という約束を信じ、旅立ちました。モーセに率いられたユダヤの民は、「乳と蜜の流れる地」(肥妖で平和な土地)に導き入れる、との約束を信じ、エジプトを脱出し、荒れ野に旅立ちました。そしてイエス様の弟子たちは、「私は世の終わりまでいつもあなた方と共にいる」というイエス様の約束を信じ、世界中に宣教の旅に出かけました。

 希望は、目には見えないものを根拠にしています。大事な人への愛、誰かから大切にされた経験、日々の小さな祈り、これらが私達に、明日を踏み出す力を与えてくれます。目には見えないもの、この世では取るに足りないほど小さいと見られているもの、それらの中に、私達の生きる力となるものがあるのです。